最終更新日:平成30年(2018)2月28日
全国の障害のある児童・生徒等の教育をめぐっては、近年、障害の重度・重複化や多様化が進んでおり、さらに養護学校や心身障害学級の在籍者が増加する傾向にあります。
都においても同様の傾向にあり、複数の障害に対応する併置型の養護学校の設置や障害の程度に応じた教育環境の整備、在籍者数の推移を踏まえた規模と配置の見直し等が課題となっています。
また、小・中学校においても心身障害学級の在籍者の増加への対応や通常の学級に在籍するLD、ADHD、高機能自閉症等(「等」は、アスペルガー症候群を指します。)の児童・生徒への適切な教育的支援の実現という課題が生じています。特に、LD、ADHD、高機能自閉症等の児童・生徒は、全般的な知的発達の遅れがないことから小・中学校の通常の学級において教育を受けていますが、学習面や行動面で著しい困難を示し、学習活動や対人関係の不適応を起こす場合もあることなどから、こうした児童・生徒に対する適切な指導及び支援を行うことが課題となっています。
こうした状況を鑑み、国は、「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(H15.3)において、障害の種類や程度に応じ特別な場で指導を行う『特殊教育』から、LD、ADHD、高機能自閉症等を含め障害のある児童・生徒(以下「LD等を含め障害のある児童・生徒」という。)一人一人の教育ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図るという基本的な方向を示しました。
したがって、今後は、都においても、社会のノーマライゼーションの進展やこれまでの都における心身障害教育の成果、東京都心身障害教育改善検討委員会最終報告、国の動向等を踏まえ、LD、ADHD、高機能自閉症等を含めて特別な支援が必要な児童・生徒の教育や支援の在り方など特別支援教育の展望を明らかにしていく必要があります。
東京都特別支援教育推進計画は、これまでの「心身障害教育」から「特別支援教育」への転換に当たり、LD等を含め障害のある児童・生徒等の教育に対する都民の期待にこたえるため、都立盲・ろう・養護学校が抱える課題の解決や、小・中学校における特別支援教育の充実への支援の在り方など、これからの都における特別支援教育の推進に関する展望を明らかにする総合的な計画です。
計画の期間は、平成16年度から平成25年度の10年間とします。
なお、都立盲・ろう・養護学校の規模と配置の適正化については、平成27年度までを計画継続期間とし、平成16年度から平成25年度までに着手するものを計画化しています。
この計画においては、都における特別支援教育推進の基本的な方向を示すものとして、「長期計画」を定めます。
また、「長期計画」の実現に向けて、当面の具体的な計画として、平成16年度から平成19年度までの「第一次実施計画」を定めます。
なお、「第二次実施計画」以降は、対象となる幼児・児童・生徒数の推計や進路希望の動向、学校の実態、社会の動向等を勘案しながら、3年ごとに策定します。
計画の区分 | 計画期間(注) | 計画の策定時期 |
---|---|---|
第一次実施計画 | 平成16年度~平成19年度 | 平成16年11月策定 |
第二次実施計画 | 平成20年度~平成22年度 | 平成19年度に策定(予定) |
第三次実施計画 | 平成23年度~平成25年度 | 平成22年度に策定(予定) |
(注)計画期間のうち、都立盲・ろう・養護学校の適正な規模と配置に関する実施計画については、計画に着手する期間を示しており、開校は平成27年度までの計画継続期間内となります。
現在、中央教育審議会において、特別支援教育を推進するための制度の在り方についての調査・審議が行われており、本年度内に答申が出される予定となっています。今後、国においては、中央教育審議会の答申を踏まえた法改正などの動きが予想されます。その場合は、本計画の内容を一部変更する場合があります
都立盲・ろう・養護学校が抱える課題の解決及び小・中学校における特別支援教育の充実への支援に向け、児童・生徒等や保護者・都民のニーズ、在籍者数の動向、社会の動向、財政状況等を総合的に勘案し、適時・適切な計画の策定と迅速な推進に努めます。
都立盲・ろう・養護学校等においては、在籍する児童・生徒等の教育内容・方法の充実や地域の小・中学校等への支援などについて、本計画に示す趣旨及び方向を踏まえ、自校の改革・改善に向けて積極的に取り組む必要があります。
LD、ADHD、高機能自閉症等の児童・生徒に対する教育環境の整備の在り方については、国の制度改正の動向や、これまでの心身障害学級における教育の成果及び保護者の要望等を十分に踏まえ、慎重に検討していく必要があります。
しかし、小・中学校における校内体制の整備、関係諸機関や専門家との連携によるネットワークの構築など、国の制度改正に影響されない内容については、早期からの取組を積極的に進めることが求められています。
今後、区市町村においては、児童・生徒や保護者のニーズ、地域の実情や本計画に示す趣旨を踏まえ、都教育委員会や都立盲・ろう・養護学校等と連携しつつ、特別支援教育推進体制の整備計画を進めていくことが望まれます。
障害のある児童・生徒等の一人一人の能力を最大限に伸長するため、乳幼児期から学校卒業後までのライフステージを見通した多様な教育を展開し、社会的自立を図ることのできる力や地域の一員として生きていける力を培い、ノーマライゼーション社会の実現に寄与します。