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社会の基本的ルールやマナーが守れない子ども、良好な人間関係を築くことができない子ども、他者への思いやりに欠け、我慢のできない子どもが増加し、青少年による凶悪犯罪等の続発が社会問題となっている。
これらの問題の背景として、少子化や情報化の進展、物質的な豊かさと都市化の進展、個人主義、平等主義のはき違えた認識による弊害といった社会環境の変化があり、「家庭での教育力の低下」、「学校での教育力の低下」、「地域の教育力の低下」をもたらしている。また、享楽的な情報の氾濫や一部の営利至上主義的な企業行動が子どもの心の荒廃に拍車をかけている。
(1) 「家庭での教育」
親から子への子育ての知恵が伝承されず、また、地域における家庭の孤立化が進むな どにより、親が子どもを育てていく自信と力を失い、しつけを学校や他人任せにするな ど、家庭における教育の危機的状況が発生している。
(2) 「学校での教育」
これまでの学校教育は、知識を一方的に教え込む教育に陥りがちで、思考力や豊かな人間性を育む教育活動が不足している。画一的な指導や過度の平等主義などにより、ともすると子どもの個性や能力を生かすことがおろそかになっている。
(3) 「地域の教育力」
地域社会での人間関係の希薄化、子ども数の減少などから、子どもが遊びや地域の人々とのふれあいを通じて社会性を身につける機会を失われてきている。地域の大人から教わったり、叱られたりすることがなくなっているなど、地域での教育力の低下がみら れる。
都教育委員会は、「心の東京革命」の考え方を基本的に評価し、「心の東京革命」を推進するために、教育関係者等を対象として、現状認識や施策等について広く意見を聴取した。
(1) アンケートの概要
都教育委員会は、本年3月、「心の東京革命」(素案)で示されている提案を踏まえ、1 都・区市町村教育委員会教育委員、2 経済団体(経済同友会、経済団体連合会、東京商工会議所)、3 公立幼稚園及び小・中・高等学校校長、4 PTA関係団体(幼・小・中・高校PTA団体、都青少年委員会連合会、都子ども会連合会)、5 有識者(都社会教育委員、都生涯学習審議会委員、都立多摩社会教育会館運営審議会委員)、6 区市町村教育委員会の社会教育主管課長、7 体育関係団体(体育指導委員協議会)の3,259人を対象にアンケート調査を実施し、1,864名から回答を得た。
(2) アンケートの結果
教育関係者等に対するアンケート調査の結果から、次のように意見が集約された。
1 子どもを取り巻く教育や社会の状況について
2 期待される取組について
3 東京都(行政)が「心の東京革命」を推進することに対する賛否について
(1) 子どもを取り巻く社会状況について、「そう思う」という回答が最も多いのは、「社会的責任よりも権利意識が優先されている」(84.9%)で、次いで「精神的な価値よりも金銭的・物質的価値が優先されている」(82.0%)、「自己中心主義の生き方がまん延している」(80.4%)である。
(2) 子どもを取り巻く教育の状況について、「そう思う」という回答が多いのは、「子どもの教育をすべて学校任せにせず、親は家庭での教育に責任を持つべきである」や「子どもが悪いことや危険なことをしたとき、それを注意してくれる大人がいない」で90%を超えている。
(3) 家庭でのしつけや教育力の強化のために、行政が行う施策として特に効果的であるという回答が多かったのは、「親子一緒に体験的な指導・助言を受けられる啓発教育」、「子育て経験豊かな高齢者と若い親子との交流促進」などである。
(4) 子どもの社会性を育むため、学校が特に力をいれるべき施策として、「職場体験やボランティア活動など社会体験学習の推進」や「教師の資質向上を図る研修の充実」、「『心の教育』としての道徳教育の充実」などの回答が多かった。
(5) 地域での健全育成を推進するため、行政が行う施策で特に効果的であるという回答が多かったのは、「親子や高齢者等が世代を超えて気軽にふれあう場や機会の提供」や、「親や大人がコミュニティ活動やボランティア活動に参加する仕組みづくり」などである。
(6) 東京都(行政)が「心の東京革命」を推進することについては、「積極的に取り組むべき」とする回答が61%で、「取組は必要だが、慎重に対応すべき」の27%を加え、約90%の教育関係者等が東京都の取組が必要であると回答している。
(7) 「素案」で示された「7つの標語」について、「適切である」という回答が最も多かったのは、「毎日きちんとあいさつさせよう」の89.6%で、最も少なかったのは「子どもにその日のことを報告させよう」の58.0%である。
(8) 「心の東京革命」についての自由意見として寄せられた回答では、「心の東京革命」 のねらいや内容、進め方などについて賛成する意見が約8割を占め、東京都(行政) が「心の東京革命」を推進することについて賛成する意見も約6割となっている。
アンケート調査の結果から、教育関係者等が極めて大きな危機意識をもっていることが明らかになった。これらの問題意識を踏まえ、今後、都教育委員会がとるべき方向について以下のように考える。
1 社会における諸価値相互の、「公」・「私」のバランスが崩れており、「心の東京革命」は、身勝手な主張を繰り返す風潮を断ちきり、子どもたちが健全に育っていく環境を整える機会と心得て、その具体的な教育施策を展開していく必要がある。
2 子どもの教育に対する自信や力の回復が求められており、大人自身が「社会的責任よりも権利意識が優先」していることが、 子どもの価値観にも反映し、「子どもが立場をわきまえない」という問題を生み出している。「心の東京革命」を大人自身の問題と して捉えることが必要である。
3 大人が社会的責任を果たし、自分の子どもも地域の子どもも同じように教え導く必要がある。
(1) 家庭でのしつけや教育力を強化するために
「親子ふれあいキャンペーン」や「トライ&チャレンジキャンペーン」など、親子一緒のさまざまな体験活動や、「親の学習講座」などを通じて、子どもが善悪の区別や社会の共通ルールを守ることや、親自身も規範を守ることについて自らの姿をもって子どもに示していく機会を充実することが大切である。
さらに、相談機能の充実を求める意見を踏まえた施策として、教育相談機能を充実し、
関係機関等とのネットワークの整備を図ることなどが有効であると考えられる。
(2) 学校が子どもの豊かな社会性を育むために
子どもの成長・発達に必要な体験を得させるため、学校が地域や家庭の協力を得て行う体験活動のみならず、家庭や地域が中心となって行う体験活動へと発展させ、内容の充実を図ることが大切である。
また、教員の資質の向上を図るためには、研修内容を見直すとともに、研修・研究の総合的・一元的実施体制を整備するなど研修・研究機能の充実を図る必要がある。
(3) 地域で健全育成を推進するために
親子で一緒に、自然や芸術にふれて学び、感性を通じ、からだを通じて学べるような施策の充実が期待されている。
また、家庭以外に、子どもたちが安心して安全に過ごすことのできる居場所を用意し、特に放課後に保護者のいない子どもの健全育成を進めるなど、個性を発揮して様々な活動に主体的に参加する子どもを育てる環境づくりが今後とも大切である。
(4) 「心の東京革命キャンペーン」の7つの標語
「毎日きちんとあいさつをさせよう」、「子どもに手伝いをさせよう」、「体験の中で子どもをきたえよう」といったこれら7つの標語については、多くの教育関係者等が賛意を示しているといえる。
(1) 社会的な運動としての「心の東京革命」
東京都(行政)が 「心の東京革命」に取り組むことについては、広く賛同を得ており、親と大人が一緒になって社会全体で「心の東京革命」に取り組み、社会的運動と して展開し、その運動を広げていく基本的素地ができているといえる。
(2) 都教育委員会における「『心の東京革命』教育推進プラン」
都教育委員会は、子どもの健全育成に責任を持つ立場にあり、「素案」に示された考え方を自らの行動指針の一つとして、これを推進していく必要がある。そこで、教育関係者等広く都民の意見を踏まえて、都教育委員会版「心の東京革命」として、「『心の東京革命』教育推進プラン」を策定した。
今後、この「プラン」に基づき、都教育委員会自ら行動するとともに、国や区市町村教育委員会にも働きかけを行い、小・中・高等学校等での取組や支援を積極的に行っていく。
都教育委員会は、これまでも子どもの健全育成については、「教育目標」、「基本方針」に明記するとともに、「児童・生徒の健全育成推進本部」を設け、「トライ&チャレンジふれあい月間」や、「道徳教育」の充実など、その推進を図ってきた。
「『心の東京革命』教育推進プラン」は、「心の東京革命」の趣旨を踏まえて、これまでの子どもの健全育成のための取組を基礎としつつ、新たな施策を加えて策定したものである。
以下、今後、重点的に取り組むべき施策を掲げる。(*印は新たに事業化を計画している事業である。)
(1)大人に向けて〜意識改革〜
【「トライ&チャレンジふれあい月間」の実施】
「トライ&チャレンジキャンペーン」及び「とうきょう親子ふれあいキャンペーン」を一体的に開催し、「トライ&チャレンジふれあい月間」として、社会全体への働きかけを行う。
【「とうきょう親子ふれあいキャンペーン」の実施】
区市町村、民間団体等と連携して、美術館や博物館、体育館等で「とうきょう親子ふれあいキャンペーン」を年2回(春・秋)展開し、自然体験や文化活動などによる親子のふれあいをとおして、子どもが自然に社会の基本的ルールを体得する活動を推進する。
【「若い親の学習講座」の実施】
若い親に対し、子どものしつけや発達に応じた家庭教育に関する学習講座を提供する事業を、生涯学習センターの情報機能を活用して、都立社会教育施設等で実施していく。
【「まちの子育成事業」の充実】(*)
子どもを「社会の子」として捉え、完全学校週五日制の実施等を踏まえて、区市町村と連携の上、地域の大人たちが高齢者とのふれあいによる「昔遊びの伝承」や、「私のまち探検」などを企画し、地域社会が子どもたちを育成する活動を支援する。今後、「まちの子育成事業」として2地域でモデル事業を実施し、その成果を順次区市町村に普及、展開していく。
【「青少年教育国際シンポジウム」の開催】
日本及び諸外国での家庭のしつけなど様々な事例を踏まえ、青少年の育成や青少年活動への支援策を探るため、国際シンポジウムを開催する。平成12年11月にシンポジウムを開催し、その成果を都民に周知し、活用していく。
【「広報媒体を活用したキャンペーン」等の展開】(*)
広く都民に対して、現在の子どもを取り巻く状況についての問題提起や家庭教育に関する手がかりを提供するため、平成12年度にスポット番組等、テレビを通じた呼びかけを行うとともに、ホームページを利用したキャンペーンの展開等を行う。
【「教育の日」(仮称)の設定】(*)
「教育の日」(仮称)を設定し、「『心の東京革命』教育推進プラン」における各事業の集中的な実施や学校から家庭・地域への働きかけを行うことにより、子どもたちの健全育成を社会全体での取組へと展開していく。
(2)子どもたちに対して〜体験と学習〜
【「道徳教育」の徹底】
社会生活上のルールやモラル、命の大切さなどについて、家庭、学校、地域社会が連携し、子どもたちの人間としてよりよく生きていく力を育成していくため、「道徳的実践活動学習教材」等の活用を図るなどして、道徳教育の一層の徹底を図る。
【「道徳授業地区公開講座」の実施】
都内全公立小・中学校で都民(保護者や地域住民)が授業を参観し、「心の教育」についてともに話し合う道徳授業地区公開講座を、平成12年度からの年次計画により、平成14年度から全校で実施する。
【「世界の中の日本人としてのアイデンティティ教育」の実施】(*)
東京の子どもたちに「世界の中の日本人としてのアイデンティティ」を形成することを目指し、国際社会で自らの考え方等を積極的に主張できる人材の育成を図るため、我が国の文化・伝統に誇りを育む教育、国際理解・国際協調を基盤としてビジネスに関する教育や外国語教育など国際社会に生きる人材を育成する教育を実施する。それとともに、両者を融合する事業として、「体験発表会」や「子どもシンポジウム」を実施していく。
【「トライ&チャレンジキャンペーン」の実施】
社会の一員としての自覚を高め、健全で豊かな心を育むことをねらいとして、都内の小・中学生を中心に、職場体験や奉仕活動、地域活動などの様々な体験活動を行い、あわせて毎年秋に体験発表会やシンポジウムを開催する。
【「職場体験とボランティア活動」の充実】
体験的な学習の実践メニューを平成12年度に作成し、「トライ&チャレンジキャンペーン」や都内公立小・中学校及び都立学校の「総合的な学習の時間」、「特別活動」において活用を図り、ボランティア活動や生産活動、職場体験などの体験的な学習を実施するように支援していく。
【「ボランティア活動」の支援】
学校でのボランティア教育を契機として、子どもたちが地域社会での継続的な奉仕活動、ボランティア活動が行えるように、都立施設をボランティア活動の場として提供する。各都立施設は、子どもたちの継続的なボランティア活動を応援する。平成12年度に実施可能な事業所から順次実施していく。
【「保育体験学習」の充実】
地域の中での幼児とのふれあいをとおして、自己抑制や他人への思いやり、協力などの社会性の発達や人間としてもっている心身の発育や特徴を知り、保育体験から豊かな愛情と人間性を培うために、幼稚園や保育園の協力を得て、「保育体験学習」を平成13年度以降充実していく。
【「アドベンチャースクール」の展開】
都立施設等を利用し、キャンプやスポーツ活動等を通して、異年齢の交流や、親子のふれあい、野外活動の体験など多様な事業を展開していく。
(3)プランを具現化するために〜仕組みづくり〜
【「教育目標・基本方針」の見直し】(*)
時代の変化や子どもを取り巻く状況を踏まえ、東京が「目指す若者像」を示すとともに、その育成と教育行政の基本となる「教育目標・基本方針」について、平成12年度中に再構築する。
【「教員の能力アップ計画」の実施】(*)
指定研修を中心とした研修の充実を図り、平成13年度に向けて「教育職員のライフステージに応じた能力開発プログラム」としての研修体系を整備する。
また、研修機能の一元化を行うことで、教員の意識改革と指導力の向上を図るため、平成13年度に「教育庁研修・研究センター(仮称)」を設置する。
【「学校運営連絡協議会」の設置拡大等】
都立学校において、学校が保護者や地域住民の意見を取り入れ、学校運営や教育活動に反映させていく「学校運営連絡協議会」を設置・拡大し、平成13年度に都立学校全校で実施する。さらに、区市町村立学校での導入に向けて、その成果を区市町村教育委員会に提供していく。
【「規範意識に関する研究」の実施】(*)
幼児・児童・生徒、教員及び保護者の規範に対する意識の現状や実態を把握し、学校(園)・家庭・地域が連携して子どもの規範意識を高める方策を明らかにするため、平成12年度に「規範意識に関する研究」を実施していく。
【「地域スポーツクラブ」の展開】(*)
区市町村の社会教育施設や学校体育施設を核とするNPO法人の地域スポーツクラブの設置に向けて関係機関等との連携を図るとともに、中学校・高校の運動部活動については、外部からの指導者を招き入れることなどにより地域スポーツクラブ化し、学校と地域の連携を推進する。NPO法人による地域スポーツクラブの設置については、全区市町村に設置することを目標とする。また、運動部活動の地域スポーツクラブ化については、モデル校を設置し、順次拡大していく。
【「教育相談センター」の設置】(*)
子どもたちの心のケア、学校の教育活動や家庭の子育てを支援する相談事業の実施体制の整備・充実を図るため、平成13年度に「教育庁教育相談センター(仮称)」を設置する。
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