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平成9年2月、東京都教育委員会は、「東京都聴覚障害教育検討委員会」を設置し、東京都における聴覚障害教育の今後の在り方について諮問した。
この「東京都聴覚障害教育検討委員会」の答申は、平成9年12月に出され、東京都における聴覚障害教育の改善・充実、都立ろう学校の再編整備などの必要性が提言された。
この答申を受けて、東京都教育委員会は、平成10年1月、「東京都聴覚障害教育改革推進本部」を設置し、今後の東京都における聴覚障害教育を推進するための具体的な枠組を検討した。
ここでの検討結果を踏まえ、東京都教育委員会は、平成11年7月「東京都聴覚障害教育推進構想」を策定し、その中で、杉並ろう学校、大田ろう学校、石神井ろう学校を再編した新しいろう学校において、大学等への進学を目指す中高一貫教育を行うことを提言した。
さらに、東京都教育委員会は、平成14年6月、「東京都心身障害教育改善検討委員会」を設置し、東京都における心身障害教育の今後の基本的方向について諮問した。その答申は、平成15年12月「これからの東京都の特別支援教育の在り方について(最終報告)」としてまとめ広く都民に公表した。この答申の中で、ろう学校については、在籍者の減少に対応した適切な学級規模・学校規模の確保、専門性の維持・向上や教育活動の活性化を図ることの課題が示されるとともに、「東京都聴覚障害教育推進構想」策定以降の聴覚障害教育をめぐる諸状況の変化を踏まえて、ろう学校の再編整備について検討し、計画を具体化していく必要性があると提言された。
この答申を受け、平成16年11月、東京都教育委員会は、「東京都特別支援教育推進計画」を策定し、その中で、中高一貫型ろう学校「都立中央ろう学校(仮称)」の設置を計画した。
*中高一貫教育と中高一貫型ろう学校 中高一貫教育校には、「中等教育学校」「併設型の中学校・高等学校」「連携型の中学校・高等学校」の3つのタイプがあるが、ろう学校は、このいずれのタイプにも該当しないため、学校設置にかかわる場合は、「中高一貫型」の用語を使用する。 一方、指導は、6年間を見通した教育課程を編成して行うため、指導にかかわる場合は、「中高一貫」の用語を使用する。
(1)在籍者の減少とその課題
都立ろう学校の在籍者は、昭和34年度の1521人をピークに以後減少を続け、「東京都聴覚障害教育推進構想」が出された平成11年度には625人、さらに、平成16年度には591人となり、幼稚部から高等部専攻科を設置している立川ろう学校と葛飾ろう学校*を除き、他6校の小規模化はますます顕著になっている。その結果、以下のような深刻な課題が生じている。
* 葛飾ろう学校は、「東京都聴覚障害教育推進構想」に基づき、足立ろう学校と綾瀬ろう学校を閉校し、平成14年4月に開校した学校である。
ア 学習意欲や学力の停滞をまねいている ・各学年単学級が多く、中学部まで学級集団が固定化しているため、児童・生徒同士が切磋琢磨(せっさたくま)する機会が不足し、学習意欲が停滞している。 ・隣接する学年の人数が少ない場合、複式学級を編制するため、同一の学級に複数の学年の児童・生徒が在籍することになる。その結果、同学年の内容による学習活動の活性化が難しい状況にある。 ・学級に在籍する児童・生徒の学習の到達度等に大きな差がある場合が多いため、マンツーマンの個別指導や少人数でのグループ指導が増えている。その結果、児童・生徒が互いに意見を交換し、問題解決するなどの学習の機会が減少している。
イ 発達段階に応じた活発な教育活動の展開が難しい
小・中学部では、音楽や体育、特別活動など、集団による指導の方が効果的な教科においては、学年を越えた合同の授業で対応しなければならず、児童・生徒の発達段階に応じた活発な教育活動の展開が難しい。
(2)進路選択する機会の不足
ア 進学に対する目的意識の希薄化
希望者全員が高等部に入学できるため、進学に対する目的意識が希薄になりがちである。
イ 自己の学習状況を認識する機会の不足
中学部まで、自校進学することが一般的であるため、他の学校(ろう学校、小・中学校)の同年齢の児童・生徒との学習状況の違いを認識する機会がほとんどない。
近年、社会のノーマライゼーションの進展に伴い、障害のある者の就労環境も変化してきた。例えば、障害者の資格・免許の取得などの欠格条項の見直しにより、聴覚障害のある者の職域が拡大してきた。 大学においても、障害者を受け入れる大学が増加し、聴覚障害のある学生の情報保障のために、手話通訳者やノートテーカー*のボランティアを養成する活動が活発に行われている。 また、医学の進歩も著しく、新生児からの聴覚検査法が開発され、聴覚障害の早期発見が可能になるとともに、めざましい電子工学の発達により、補聴器や測定装置が改善され、さらに人工内耳の開発・普及により、高度難聴児の補聴が充実してきた。
*ノートテーカー・・・聴覚障害のある学生のための講義内容記録補助者のこと。聴覚障害のある学生と共に講義に出席し、板書以外に教授等が口頭説明していることなどを筆記し、情報伝達することを業務とする。
こうした社会の変化に伴い、社会性の涵養(かんよう)や大学進学のできる学力、多様なコミュニケーション能力を身に付けることに重点を置いた教育に対する保護者のニーズが高まっているとともに、高い専門性を身に付けた教員の配置を望む声もますます高くなっている。
社会性の発達や学習意欲の向上を期待して、我が子をろう学校から通常の学校へインテグレート*させる保護者の指向は、現在も続いており、また、人工内耳の普及により、ろう学校に行かずに幼稚園又は保育所と民間の聴覚障害幼児通園施設を併用し、その後、小学校に就学するというケースも多くなっている。
しかし、その一方で、ろう学校の幼稚部等から通常の学校に就学した児童・生徒が、情報不足による学力の伸び悩みやコミュニケーション不足による人間関係のトラブルなどにより、中学部や高等部段階でろう学校に戻るケース(Uターン)も多くあり、中には、高等部段階で、はじめてろう学校の門をたたくケース(Lターン)もいる。こうした状況から、ろう学校においては、児童・生徒の教育歴に応じた指導の充実も求められている。
* インテグレート・・・障害のある児童・生徒が、通常の学校・学級で学ぶこと。
大学に在籍する聴覚障害のある学生の多くは、情報保障のための手話通訳者やノートテーカーなどのボランティアを活用しながら大学の講座を受講している。しかし、手話通訳者やノートテーカーを活用するだけで円滑な大学生活が送れるわけではない。 聴覚障害者を受け入れている大学からは、(1)大学教育についていくことのできる基礎学力の向上、(2)さまざまなコミュニケーション手段を選択・駆使できる能力の育成のほか、(3)高等部時代での豊かな諸活動の体験が、充実した大学生活を送るためには不可欠であるといわれている。そのために、ろう学校における教科指導や自立活動、特別活動等のより一層の改善・充実が望まれている。
ろう学校高等部普通科(普通学級)を卒業又は専攻科を修了した生徒の就労率は、100パーセントといわれているが、その一方で、企業の中での積極的な人間関係づくりがうまくいかず、精神的に疲れて転職する者も少なくないのも現状である。 こうした現状から、企業等からは、(1)言語力の向上(正しい日本語を身に付け、職場で正確かつ人間関係を円滑にするコミュニケーションができる力)、(2)基礎学力の向上(時代の変化に対応できる思考力・判断力等)、(3)積極的な人間関係づくり、(4)社会常識の涵養(かんよう)、(5)職業観・勤労観の醸成など、ろう学校におけるキャリア教育の充実や障害のない者と共に生きる力を育成する教育の充実が強く求められている。
平成16年11月、東京都教育委員会が策定した「東京都特別支援教育推進計画」における中高一貫型ろう学校の設置計画の概要は以下の通りである。
近年、障害者の資格・免許の取得などの欠格条項の見直し、特例子会社の設置など、社会のノーマライゼーションの進展に伴い、障害のある人たちの就労環境も変化してきた。 こうした中で、生徒の進路希望が多様化しており、ろう学校においては、進学を希望する生徒が増加傾向にあるとともに、各種の資格取得を希望する生徒も増えてきている。そのため、大学等への進学や大学卒業を条件とした各種の資格取得に必要な学力やコミュニケーション能力を身につけることに重点を置いた教育に対する生徒や保護者のニーズに応えることが課題となっている。 そこで、中学部・高等部の6年間を見通した教育課程を編成し、大学等への進学をめざす中高一貫型ろう学校である都立中央ろう学校(仮称)を設置する。
計画の策定に当たっては、都立ろう学校の生徒及び保護者の中高一貫型ろう学校の早期開校への要望が高まっていることなどを勘案し、現杉並ろう学校敷地内に新校舎が竣工するまでの間、中学部を大塚ろう学校内に、高等部普通科を石神井ろう学校内に暫定的に設置し、平成21年4月に新校舎が竣工した後、中学部・高等部を一体開校する。 なお、大塚ろう学校、品川ろう学校、江東ろう学校、杉並ろう学校の中学部は、平成18年度に中央ろう学校(仮称)に再編し、大田ろう学校及び石神井ろう学校高等部普通科は18年度に中央ろう学校(仮称)に再編する。

都立ろう学校を8校から4校に再編し、学校・学級の活性化を図るとともに、4校のうち1校を大学等への進学のための学力向上を目的とした中高一貫教育を行う学校(中央ろう学校(仮称))として設置することにより、生徒の発達段階や習熟度、進路希望に応じた聴覚障害教育の専門的な指導をより一層充実することが可能になる。
大学等への進学のための学力向上を目的とした中高一貫教育を行う中央ろう学校(仮称)を新たに設置することにより、中学部又は中学校段階から、生徒一人一人の能力や適性に応じた学校選択の機会を提供することが可能になる。
幼稚部、小学部と分離した中高一貫教育を行う中央ろう学校(仮称)を設置し、都内全域から生徒を受け入れることで、全都のろう学校小学部に在籍する児童に大学等の進学に向けた目的意識をもたせることができ学習意欲の向上につなげることが可能になる。
中高一貫教育を行う都立中央ろう学校(仮称)を設置して、中学部段階から入学相談を導入することにより、小学部卒業段階の自己の学習状況を認識する機会となる。 また、このことは、ろう学校で指導する教師の刺激にもなり、結果的に、幼稚部を含め、ろう学校全体の教育の活性化・向上につながる。
| <問い合わせ先> 教育庁学務部義務教育心身障害教育課 電話 03(5320)6753 |
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東京都教育庁総務部教育情報課 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 電話 03-5320-6733 FAX 03-5388-1726
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