とうきょうの教育 特集号
特集号 平成20年5月30日発行

東京都教育ビジョン(第2次)で取り組んでいきたいこと

PHOTO:委員長/木村 孟

 東京都教育ビジョンで打ち出された27の重点施策は、何れも重要な施策ですが、私は、この中から、特に「確かな学力」の定着と伸長ものづくり人材の育成の2施策を選び、私の考えを述べたいと思います。知識基盤社会と言われている21世紀においては、国民一人一人が備えている「知」の多寡によって、国の消長が決まると言っても過言ではありません。少しでも多く有用な「知」を身に付けるためには、人間の発達段階それぞれに応じた真面目な学習が必要です。我が国では、高等学校への進学率が100%近くに達していますので、小学校、中学校、高等学校のそれぞれの段階で、きちんとした学力を身に付けておくことが極めて大切で、東京都教育委員会としても、そのための条件整備に全力を尽くしますが、各学校の先生方、保護者の皆様にも特段の努力をお願いしたいと思います。

 次に、ものづくり人材の育成です。我が国は、明治以後、ものづくりの振興に努め、世界有数の経済大国となりました。天然資源に恵まれない我が国が、今後とも世界の先進諸国に伍して行くためには、ものづくりに頼るしかなく、そのためにもものづくり人材の育成は極めて重要です。今、まず我々がやらなければいけないことは、我が国の子供達に多い、理科嫌い、算数・数学嫌いを、国を挙げての取組で、理科好き、算数・数学好きに変えて行くことです。

PHOTO:委員/高坂 節三

 最近、ある学校の校長先生が学級崩壊の問題解決に疲れ、自律神経失調症で、校長職を離れざるを得ないという報告を受けました。ますます多くの問題の解決を期待されるようになっている学校の現状を考えると、真面目な先生ほどこうした問題で傷つけられることは想像に難くありません。地域社会の協力を得ながら、こうした問題の解決に努めて頂く事は当然のことではありますが、校長先生を始めとする先生方の負担を少しでも軽くするために、外部人材の教育活動への積極的な活用を真剣に考えなければいけないと考えます。文部科学省の調査によれば、教職員総数に占める教員以外の専門スタッフの割合が、アメリカでは46%であるのに対し、日本では24%と約半分なのです。

 外国人児童・生徒に対する日本語指導・相談の充実にも意を尽くさなければならないと思っています。国際化と少子化の中で、外国人児童・生徒の増加は避けられない時代の要請でしょう。戦後、多くの日本人が海外に進出・駐在を始めた時に、子供の現地での教育が一番の問題でした。 特に、アメリカの小学校などは、積極的に駐在員の子供の教育に尽くしてくれました。これからは、こうした外国の良い例に学ぶ必要があると思っています。

PHOTO:委員/瀬古 利彦

 私は、高校生のときにマラソンと出会い、恩師と二人三脚で練習を重ね、やがてオリンピックや国際大会で活躍することができるようになりました。そこで得たものは、健康な体力や運動の能力とともに、夢に向かって努力し続ける力、世界のライバルたちと切磋琢磨し、ともに伸びようとする精神でした。今、子供たちの体力低下が指摘されています。子供たちに、生涯にわたって運動やスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育てることは、これからの時代をたくましく生きる活力ある人間を育成することにつながるものです。そこで私はスポーツ教育等の推進による学校体育の一層の充実の取組に期待をしています。

 もう一つ、力強い取組を期待しているのが、「放課後子供教室」の推進です。私が子供のころは広場や原っぱで日が暮れるまで遊びまわったものですが、今は都市化が進み、そうした環境が少なくなりました。また、子供を巻き込んだ事件の多発は、子を持つ親の一人として不安を隠せません。子供たちが放課後や週末等に生き生きと活動できるように、地域住民の参画のもと、全区市町村で、子供たちの安全・安心な居場所づくりを進めていく取組に大きな期待を寄せています。

PHOTO:委員/内館 牧子

 東京都教育ビジョンにおいて、今後5年間で重点的に取り組みたいと私自身が考えている施策は、

1 規範意識や思いやりの心の育成
2 日本の伝統・文化に対する理解の促進
の2点です。

 かつて、日本人は老若男女の別なく「規範意識」がありました。少なくとも「人としてやってはいけないこと」をしっかりと理解し、身に付けていたのです。それが少しずつ少しずつ崩れ始め、「規範意識」と「陋習(ろうしゅう)」を同一視するような風潮さえあったことは、悲劇としか言えません。この施策は「法」に関する教育の推進として捉えられている通り、「規範」は個々人の「内なる法」だと私は考えています。

 「日本の伝統・文化」に関する理解は、国際人育成のためにも非常に重要です。自分が帰属する国の伝統や文化を語れずして、諸外国人と対等に仕事はできません。かなり近い過去、「日本の伝統・文化」を短絡的に一括して「負の遺産」と捉え、まずはぶち壊そうという風潮がありはしなかったでしょうか。日本文化の繊細さ、高い美意識、独特の精神性、姿、形などを理解し、守るべきは断固として守る知性を育てたいと強く思っています。

PHOTO:委員/竹花 豊

 ビジョンは実現してこそ意味があります。それではじめて現状の問題点を解決することができるからです。では、誰にその実現の責任があるのでしょうか。私を含め、公教育に関わるすべての者、保護者、地域の大人たち、行政に携る者等です。これらの「大人たち」には、子供をめぐる状況に危機感を持ち、子供たちのため、また、社会のために、これまでにない努力が求められています。議論に終始せず、知恵を出し合い、合意できる点を見つけて大人たちが足並みを揃えた取組を進めることが大切です。大人たちの真剣さ、本気の姿が、子供たちの心を捉え、その成長の糧になるのだと思います。

 子供たちの体力や学力の向上も規範の確立も、節度に欠けた、怠惰な大人たちの中からは生まれないでしょう。子供たちの成長を何よりも大事にし、自らの振る舞いをただし、一歩踏み出した取組に関わる多くの大人たちが必要です。そんな大人たちを組織する格好の場は学校です。保護者を含め、どれだけたくさんの子供思いの大人が学校を盛り立てるかがこのビジョン実現の鍵であると言っても過言ではありません。学校も参加を促される保護者や地域の方々もこれまで以上の積極さが必要です。PTA、おやじの会、学校支援地域本部、放課後子供プラン等関わり方はなんでも良いのです。「大人たち」が、あきらめず、一工夫してみれば必ず新たな動きが生まれてきます。そんな取組をビジョンは求めているのです。私も多様な角度から関わっていきます。

PHOTO:委員/中村 正彦

 「三つ子の魂百まで。」という言葉があるように、幼児期の教育が大切なことは論をまちません。子供の教育について第一義的責任を有するのは父母その他の保護者ですが、核家族化などにより育児の経験が継承されにくくなっていることも確かです。東京都教育委員会では、これまで就学前の子供の生活習慣の確立などに取り組んできましたが、今後はさらに対象を拡大し、乳幼児期からの子供の教育支援プロジェクトとして、保護者向けテキストの開発や地域において乳幼児と親を支援する住民間のネットワークづくりを進めるなど、社会全体で子供の教育を支える取組を推進します。

 東京都教育委員会では、昨年11月に、東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画を公表しました。特別支援教育では、障害のある子供たちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児・児童・生徒一人一人の教育ニーズを把握し、個に応じた適切な指導及び必要な支援を行っていく取組が重要です。その取組の一つとして、小・中学部段階からのキャリア教育を充実させるとともに、民間も活用した就労支援体制を整備して企業就労を促進していきます。

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