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言語能力向上ニュース

第6号 平成23年10月発行
東京都教育庁指導部指導企画課

言語能力向上に係る主な課題とその解決策 2

書くこと
 各教科等の授業に書くことの学習活動を導入する際には、苦手な子供の「つぶやき」に着目をして授業づくりを行うことが有効です。
書くことが苦手な児童のつぶやきとその対応1

−「書くことなんてないよ」−

 つぶやきの第一は「書くことなんてないよ」です。
 この声に対応するには、子供たちが書くことを豊かにもつ学習過程、つまり「取材・選材」の段階における指導の工夫が必要です。
 取材の対象としては、本や文章、パンフレットやリーフレット、新聞や雑誌及びコンピュータや情報通信ネットワークが考えられます。また、取材の方法は、インタビューやアンケート及び話合いなどがあります。取材して集めた情報については、文章の構成や記述に役立つよう、その真偽や適否を見極めながら、自分の目的や意図に応じて整理したり分類したりすることが重要です。
 その際、色分けした付箋紙を用いるなど、情報の操作が容易に行えるよう、取材メモに関する工夫等を取り入れると、子供たちは情報を収集し整理する過程で、自分の考えを明確にすることができるようになります。

書くことが苦手な児童のつぶやきとその対応2
構成シートの活用

−「書き方が分からないよ」−

 子供のつぶやきの第二は「書き方が分からないよ」です。この声に対応するには、論の組立て方や文章の書き方、推敲の仕方、つまり「構成・記述・推敲」の学習過程における指導の工夫が必要です。
 かつて観察した小学校第4学年の国語の授業で、次のような場面に遭遇しました。
 既に習った段落相互をつなぐ言葉(接続詞)を使って作文をしました。すると、書くことを苦手とする児童が、筋の通った800字の文章を書き上げたのです。
 段落構成を記した表に取材カードを貼る学習は、言語情報の具体的操作で、作文を航海に例えれば、構成シートは羅針盤です。伝えたいこと、材料、構成が決まり、文のつなぎ方が分かれば、苦手な子供も容易に文章を書くことができるのです。

書くことが苦手な児童のつぶやきとその対応3

−「書いて何になるのかな」−

 実技を伴う教科の授業に、書くことの学習活動を導入する場合、書くことが当該実技の向上に結び付くことを子供自身が実感でき、短時間で行えることが重要です。効果的・効率的な書くことの導入です。その事例として、「言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】」(文部科学省)にある第6学年体育科「速く!美しく!(ハードル走)」が参考になります(本ニュースの第4号に掲載済み)。
 子供たちが「頑張って書けば、認めてもらえる」という実感をもつこと、つまり評価段階の工夫も必要です。書くことは多くの場合、読んでもらう相手がいることが前提となります。その相手との交流を、書くことのまとめの段階に位置付けることは、子供たちの学習意欲を高めることにつながります。書いたものを読み合い、感想を互いに伝え合う、発表会を設定する、文集にまとめて家庭に配布し、保護者にも読んでもらうなどといった工夫です。
 書いたものを発表することについては、推敲して書き終えた文章だけでなく、取材・構成の段階のメモなども対象にすると、苦手な子供の学習支援になります。

書くことが苦手な児童のつぶやきとその対応4

−「書くのは面倒だなあ」−

 書くことは、私たちが言葉と向き合う上で、最も丁寧な行為です。時間と労力を要するため、面倒に思いがちです。しかしながら、「書くことは考えること」であり、学習する上で欠くことができません。
 では、どうしたら面倒に思う感覚を軽減し、主体的に書き、考える子供を育成することができるでしょうか。
 そのためには、次の二つのことが重要です。
 一つは、書くことを習慣化させることです。具体的には、1授業で子供が物事を考える際、常にノートに自分の考えとその根拠を箇条書きにさせる、2各教科のねらいに即した短作文の学習活動を継続的に実施する、3小学校段階で組織的・系統的に日記指導を行う、などの取組が有効です。
 もう一つは、書く効果を実感する体験をより多く積ませることです。そのため、1物事を確実かつ効率よく実行するため、メモの取り方を指導する、2大切な事柄について、何回も書いて唱えて記憶させる、といった取組を継続して実施することで、子供たちは書くことに慣れ、その効果を実感できるようになります。  現在、多くの小・中学校が、考える子供の育成を教育目標に掲げています。その達成に向け、学校全体で書くことを厭(いと)わない子供を育成することが必要です。


小学校の指導事例

足立区立竹の塚小学校
足立区立竹の塚小学校  足立区立竹の塚小学校は、「言語活動の充実による思考力・判断力・表現力等の育成」を研究主題として、「授業創造プロジェクト」「学校図書館プロジェクト」「言語スキルアッププロジェクト」の三つを柱に据えて研究を進めています。
【授業創造プロジェクト】
 各教科、各単元、各1単位時間内の学習活動の中に言語活動を充実させる場面を意図的・計画的に取り入れ、児童の思考力・判断力・表現力等を育成する。
目指す児童像
自分の考えを相手に分かるように書いたり話したりする児童
研究の視点と手立て
1 思考力・判断力・表現力等を育成するための工夫
・言語活動の充実を図る場の設定  ・話形、見本及びパターンの指導の徹底
・教材、教具及びワークシートの有効活用  ・評価の観点の明確化
・学習形態の工夫 
心情円グラフを活用した道徳の授業 社会科で新聞を活用
心情円グラフを活用した道徳の授業
 考えたことや思いを表出しやすくすることができる色分け円グラフを教材として活用
社会科で新聞を活用
 新聞記事から必要な情報を選び、その情報を用いて防災対策について考案
【学校図書館プロジェクト】
 学校図書館を活用して、読書活動と書く学習活動の充実を図り、児童の言語能力の向上を図る。
目指す児童像
自ら意欲的に読書に取り組む児童
研究の視点と手立て
1 楽しく本を読むための工夫  2 伝え合うための工夫
 ・全校で行う朝読書   ・ブックトーク
 ・図書ボランティアの活用と研修の充実   ・帯やポップの作成
 ・公立図書館の図書配送サービスの活用 
図書ボランティアによる読み語り 図書委員による読み語り
図書ボランティアによる読み語り
 毎月第3金曜日を「たけりんの日」とし、昼休み終了後の15分間、全学級で図書ボランティアによる読み語りを実施
図書委員による読み語り
 読書週間の期間、図書委員が第1学年から第4学年までの各学級を訪問し、10分間の読み語りを実施
 ※足立区では、読み手と聞き手の心と心の交流や触れ合いを強調するため「読み語り」という用語を使用しています。
区立竹の塚図書館の方々によるパネルシアター パネルシアターとは、毛羽立ちのよい布のパネルに、布でできた登場人物や小道具を貼ったりはがしたりしながら進める物語等の手法のこと。
区立竹の塚図書館の方々によるパネルシアター
 毎月、各学級に公立図書館から借りた本を40冊ずつ設置。
公立図書館の方々によるブックトークやパネルシアター
【言語スキルアッププロジェクト】
 年間2回、「弁論大会」の開催を通し、児童の言語能力の向上を図る。
目指す児童像
自分の思いや願い、考えをもち、それらを正確に論理的に伝えられる児童
研究の視点と手立て
1 自分の考えをもつための工夫  2 自信をもって表現するための工夫
 ・話合い活動の充実   ・ミニスピーチ大会の実施
 ・討論会の実施   ・自己評価と相互評価
 ・学校図書館の活用 
目当てに沿って話し合うための観点
目当てに沿って話し合うための観点教室に掲示された「話合い 10の約束」
教室に掲示された「話合い 10の約束」
学級活動における話合い活動、朝や帰りの会及び朝学習の時間を用いたミニスピーチ大会を通し、自分の考えや意見を表現することの楽しさを味わわせ、自信をもたせる教育活動を実践
弁論大会で「東照宮の魅力と美しさ」について発表し、最優秀賞を受賞した児童

弁論大会で「東照宮の魅力と美しさ」について発表し、最優秀賞を受賞した児童

 6年生の各学級代表2名が、5・6年生の全児童を対象として、自分の考えや意見を発表


練馬区立南田中小学校
練馬区立南田中小学校  練馬区立南田中小学校の研究主題は、『「読むこと」を大切にし、自分の考えを表現できる児童の育成−区立南田中図書館と連携した教育活動の推進−』です。「南田中図書館と連携し、思考力・判断力・表現力等を育成するための国語科の授業の在り方の追究」「南田中図書館や学校図書館支援員の効果的な活用を探り、読書に親しみ、進んで自分の考えを表現できる児童の育成」をねらいとし、研究に取り組んでいます。
【目指す児童像】
低学年 中学年 高学年
1 文章の内容を正しく読んだり、想像を広げながら読んだりできる児童
2 読んで分かったことや感じたことを表現できる児童
3 目的に応じて、楽しんで読書をしようとする児童
1 中心となる言葉や文を捉えて正しく読んだり、自分の感想や意見をもって読んだりできる児童
2 相手に分かるように表現できる児童
3 目的に応じて、様々な分野の本を読もうとする児童
1 文章の要旨を的確に捉えて読んだり、自分の考えを明確にしながら読んだりできる児童
2 自分の思いや考えが伝わるように表現できる児童
3 目的に応じて、幅広い読書をしながら、自分の考えを広げたり深めたりしようとする児童
【区立図書館及び学校図書館を活用した国語科の指導】
 国語科におけるそれぞれの単元で身に付けさせたい能力を明確にした上で、区立図書館及び学校図書館の活用方法を年間指導計画に明記しています。
【単元の学習の流れ】
「1次(導入)」「2次(展開)」「3次(発展)」における図書館を活用した学習活動の例
1次(導入) 2次(展開) 3次(発展)
・読み聞かせ
・ブックトーク
・ストーリーテリング
・本の紹介
・並行読み
・読み比べ
・調べ読み
・読み聞かせ
・ブックトーク
・本の紹介
・劇
・読み広げ(同じ作者の他の作品、同じテーマの他の作品等を読む。)
・読み聞かせ
・音読発表会
・ブックトーク
・ストーリーテリング
・本の紹介及びポップ作成
1次(導入)
 1次(導入)
 単元の目当てに関連する読み聞かせ
3次(発展)
 3次(発展)
 学校図書館支援員によるアニマシオンを実施
2次(展開)
 2次(展開)
 学校図書館を活用した調べ学習
アニマシオンとは、子供たちに読書の楽しさを伝え、子供の読む力を引き出すために開発された読書指導法
【南田中モデル−区立南田中図書館との連携】
 平成21年5月、学校の廊下伝いに区立南田中図書館が開館。本の貸出手続の迅速化、教職員及び保護者への図書資料の提供、児童の学習に役立つ資料の提供等を通して、児童の読書活動を支援する取組を深めています。
学校図書館支援員による図書館の整備
学校図書館支援員による図書館の整備
ポップ紹介
ポップ紹介
ポップ作成に挑戦する児童
ポップ作成に挑戦する児童
学校図書館支援員による本の貸出風景
学校図書館支援員による本の貸出風景
春と秋、年間2回の読書旬間
春と秋、年間2回の読書旬間
読書旬間は、学校図書館支援員と図書委員とが連携して実施。学校図書館に、図書委員や教員が推薦する本を並べ、読書旬間の最後には、児童が読んだ本を紹介する読書旬間カードを掲示