平成11年10月15日、「教員等人事考課制度導入に関する検討委員会」はそれまでの検討結果を取りまとめ、「教員等人事考課制度に関する中間のまとめ」として、東京都教育委員会教育長に報告しました。ここでは、「教員等人事考課制度に関する中間のまとめ」の全文をご紹介します。
はじめに
現在、学校ではいじめ・不登校など様々な課題が山積している。こうした課題を解決し、子どもたちがのびのびと学ぶことができる環境を整えるためには、校長を中心として教員相互が連携し、学校を取り巻く様々な課題の解決に向けて、全体として創意工夫を重ねることが何より求められている。そのためには、児童生徒の指導に直接携わる教員一人ひとりが、学校改革の必要性を認識し、組織の一員として新たな課題に適切に対応できるようにする必要がある。教員の資質能力の向上こそが、最終的には教育改革の成否を決するものといえる。
こうした認識のもと、平成11年3月「教員の人事考課に関する研究会」から、東京都教育長に対し、能力と業績に応じた人事管理制度を導入し、教員の人材育成を図る旨の提言がなされた。
本委員会は、「教員の人事考課に関する研究会」報告の内容を踏まえ、新しい人事考課制度の導入に向けた課題を検討し、制度の具体案を策定するため、平成11年7月に設置されたものである。
本委員会では、教員の資質能力の向上と学校組織の活性化を目的とした自己申告・業績評価制度について検討を重ね、このたび、今までの検討結果を整理して中間のまとめを行うこととした。
今後は、関係団体などからこの「中間のまとめ」に対する意見を聴取し、それらも参考にしながら検討を進め、本年12月を目途に人事考課制度に関する最終的な報告をまとめる予定である。
また、人事考課制度の実施上の課題や評価結果の具体的な活用、人材育成の具体策についても、今回まとめた制度を前提に引き続き検討を行い、来年3月までに報告としてまとめることとする。
〔検討の前提〕
○ 教育職員としては教諭をはじめ様々な職種があるが、まず教諭に限定して検討し、その後他の職種について検討を進めることとする。
T 自己申告・業績評価の対象となる職務分類・範囲について
○ 自己申告・業績評価の実施案を作成するに当たっては、対象とする職務の分類と範囲を明確にすることが必要である。
1 職務分類について
○ 教員の職務は広範かつ多様であり、「学習指導」、「生活指導・進路指導」、「学校運営」、「特別活動」、「教科等に関する研究・研修」、「部活動指導」が分類例として考えられる。このうち、「学習指導」から「特別活動」までについては、学校において教育活動を進める職務の根幹であることから、職務分類の項目として位置づける。
○ 「学校運営」は、担当の校務分掌に限定せず、学年・学級経営や各種委員会活動などを含めて広く学校運営への取組をとらえたものである。
(1)教科等に関する研究・研修の取扱い
○ 教科等に関する研究・研修は教員にとって重要な職務といえるが、その目的は、学習指導、生活指導、校務分掌等の職務における能力開発に資するものであり、成果についても学習指導等の局面において現れることから、独立した評価項目として扱うことは難しい。しかし、教員が明確な目標を設定した上で研究・研修に取り組むとともに、その成果を自己評価し次期の目標へつなげることは、教員の能力開発に寄与する。
このため、研究・研修の扱いについては、自己申告では、職務分類とは別に独立した項目として設けることとする。一方、業績評価においては独立した職務分類とはせず、学習指導等他の職務分類の中で評価を行うこととする。
(2)部活動指導の職務分類上の取扱い
○ 部活動は、教育課程には位置づけられていないが、現実には個々の教員の献身的努力により活発に行われており、教員の職務として積極的に評価することが必要である。 他方、部活動に対する教員のかかわりの度合いは、教員の自発性に負うところが大きく、校種によっても大きく異なるため、独立した職務分類を設けるには不適当な面がある。
このため、部活動指導は「特別活動・その他」という分類を設け、その中で評価するようにする。
以上の検討を踏まえて自己申告・業績評価の対象となる職務分類を整理すると、次ページの表になる。
学習指導 生活指導・進路指導 学校運営 特別活動・その他
○ 自己申告については、上表の分類の他に、「教科等に関する研究・研修」を項目として位置づける。
2 評価対象となる職務範囲について
○ 一般的な人事考課の考え方としては、その職務範囲が広範かつ多様であっても、基本的には勤務時間の内外を問わず、担当職務として行われる職務全般がその評価対象となり得る。これに加えて教員の場合、部活動指導や補習指導、家庭訪問、地域の見回り等は、勤務時間外において、教員の自発性から校長の承認の下に行われている場合もあり、そのような実態を踏まえて評価対象となる職務範囲を定めることとする。
○ 勤務時間外の職務については、その性質上校長が超過勤務を命ずることのできる職務が規定されており(いわゆる「超勤4項目」)、その他のものと明確に区分する必要がある。
○ 教員の職務を勤務時間内・外に区分し、勤務時間内の職務は全て加減点評価(一定の基準に照らし、能力、実績等が基準を上回ったか下回ったかで評価する。)する。また、勤務時間外の職務については、校長が必要に応じて超過勤務命令を行った業務については加減点評価する。
*加減点評価の対象となる職務を例示すると下表のようになる。
範囲分類
勤務時間内 勤務時間外 学習指導
○教科指導○道徳指導
○「総合的な学習の時間」
○自立活動
(研究・研修を含む)
●生徒の実習に関する業務
生活指導・進路指導
○生活指導(校務分掌を除く) ○進路指導(校務分掌を除く)
(研究・研修を含む)
●非常災害等やむを得ない場合に必要な業務
学校運営
○校務分掌○学年・学級経営
○各種委員会活動
(研究・研修を含む)
●教職員会議に関する業務 特別活動・その他
○特別活動・学級活動
・児童会・生徒会活動
・クラブ活動
・学校行事
(研究・研修を含む)
○部活動
●非常災害等やむを得ない場合に必要な業務●学校行事に関する業務
注1:上表は典型的な職務を例示したものである。
注2:表中の●は「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例」第5条に定める、いわゆる「超勤4項目」に該当する職務である。
○ 勤務時間外において、教員の自発性に基づき校長の承認の下に行われた補習指導・部活動指導・家庭訪問・地域の見回りなどの職務については、特に顕著な実績が挙がった場合には、その努力を積極的に評価するために加点評価(原則として減点の対象としない。)する。
U 自己申告について
1 自己申告の目的
○ 自己申告制度は、学校経営方針を踏まえて教員が自ら職務上の目標を設定し、その目標をどこまで達成できたかを自己評価するものであり、教員が自己の職務を振り返り、今後の改善点を見出すために必要である。
○ 自己申告制度は、教員がより主体的に職務に取り組むとともに、自己理解を深めることを通じて、その職務遂行能力の開発・向上を目指すことを目的とする。あわせて、教員の能力、適性や異動希望等を的確に把握し、教員の育成及び異動等の基礎資料とする。
2 自己申告制度の概要
(1)申告基準日
○ 自己申告は年3回、目標設定、目標の追加・変更、自己評価の順に行うこととする。
○ 申告基準日は、目標設定を行う当初申告は4月1日、追加・変更に関する中間申告は10月1日、自己評価を行う最終申告は3月31日とする。
(2)申告書の記入項目
○ 自己申告制度の目的を踏まえて、以下の点に留意して申告項目を設定する。
@ 業績評価の職務分類と共通の項目であること
自己申告を参考にして指導・助言さらに評価が行われることから、自己申告の項目は原則として業績評価の評価項目(職務分類)と共通とする。
A 教員の能力開発に向けた項目の設定であること
能力開発に向けた適切な指導・助言を行うためには、教員が申告目標を達成するためにどのような手立てを行うつもりかが分かるように、項目の設定を工夫する。
また、活用してほしい能力・得意分野などを申告する項目も設定する。
B 学校経営方針に対する自分としての取組目標の項目を設定すること
学校を取り巻く様々な課題を解決するためには、校長のリーダーシップの下、教員が連携・協力しながら対処していくことが求められる。このため、学校経営方針について、教員がどのように認識し、どのように対処しようとするのかを記入できる項目を設定する。
C 目標等の追加・変更などが行えるように、項目を設定すること
教員の職務は児童生徒の状況に応じて遂行されるものであり、必要に応じて目標等を変更できるようにする。
D 自己評価を行う項目を設定すること
1年間を振り返って、設定した目標に対してどのような姿勢で取り組み、どの程度達成できたか、また残された課題は何かについて自己評価を行う項目を設定する。
E 異動や校務分掌に関する項目を設定すること
モラールや資質能力の向上等の観点から、異動希望及び校務分掌に関する希望について記述できる項目を設定し、異動や校務分掌を決定する際の基礎資料とする。
このことから、従来使用している異動希望調書は自己申告書に代えることとする。
(3)面接について
○ 自己申告に当たっては、校長・教頭が面接を行い、申告された目標の方向性や水準、目標の達成度等について個々の教員と話し合い、学校経営方針や児童生徒の実態等の状況を踏まえて、教員個々の職務改善に向けた方策やその結果などについて具体的に指導助言する。
○ 面接に当たっては、以下の点に留意する。
@ 教員は、学校の組織目標の達成に向けた自己の取組目標を設定する必要があることから、校長は年度当初に学校経営方針を全教職員に示す。
A 校長及び教頭は、教員の職務等に対する認識や意向について、常日頃から把握に努めていなければならないが、面接はそれを直接聞き、補足・確認することができる機会であることを認識し、積極的に意思の疎通を図ることとする。
B 目標設定に当たっては教員の考えを尊重し、モラールの向上につながるように努める。ただし、学校経営方針と整合性がとれたものとするように指導助言する。
C 職務改善に向けた方策などについて指導助言を行うことを心がける。
(4)その他
○ 教員に自己申告の重要性が十分に認識され主体的に申告が行われるよう、自己申告や面接の目的・意義について、自己申告実施要領において明確に示し、教員に周知することとする。
V 業績評価について
1 業績評価の目的
○ 能力と業績に応じた人事管理を通じて、教員一人ひとりの資質能力を向上させるためには、職務遂行状況等について的確に把握するための評価制度が必要である。
○ 業績評価を行う主要な目的は第一に、職務遂行を通じて挙げた実績やその過程における努力等について積極的に評価するとともに、いまだ不十分な点やさらに伸ばすべき点についての適切な指導育成の方策を見出すことにある。
○ 第二の目的は、教員のモラールの向上や学校組織の活性化を図るため、業績評価の結果を給与や昇任等に適切に反映させることにある。具体的には、職務遂行を通じて挙げた実績及びその過程における努力等を給与等に適切に反映させるとともに、教員の資質能力や適性などを把握して、昇任や適材適所の校内配置・異動を行うために活用する。
2 評価期間
○ 各学校では、4月1日から翌年3月31日の1年度を単位として教育課程が編成され、それに沿って学校運営が行われていることから、業績評価の評価期間も、4月1日から翌年3月31日までとする。
3 評価項目・要素
○ 職務分類(学習指導、生活指導・進路指導、学校運営、特別活動・その他)ごとに自己申告を行うことから、これとの対応を図るため、各職務分類を評価項目とし、項目ごとに評価を行う。
○ 各評価項目における職務遂行状況について、複数の視点で多角的に評価するため、各評価項目を能力、情意(意欲・態度)及び実績の3つの評価要素に区分する。
4 評価基準
(1)基本的考え方
○ 全校種及び全職種共通に5段階評価(上位から順にS、A、B、C、D)とする。A、B、Cそれぞれの評語及びその内容について一般的・基本的な評価基準を示すこととし、SはAを上回る場合、DはCを下回る場合とする。
○ 総論的なものとして、職種ごとに全校種共通の要素別の評価基準を作成する。各評価要素ごとに、着眼点(全校種共通)を列記し、3段階(A、B、C)に具体化した内容を示す。
○ 評価者による着眼点のばらつきを抑えるとともに、より実態に即した評価を行うため、着眼点の具体的事例を校種ごとに列記する。
(2)職種・校種の違いについて
○ 職種の考え方
職種によって職務内容等が異なるので、職種ごとに評価基準を設ける。
まず、教諭について評価基準を設定し、他の職種(教授、助教授、養護教諭、実習助手及び寄宿舎指導員等)についてはそれぞれの特性を勘案し、職種ごとの評価基準を設定する。
○ 校種の考え方
校種ごとの評価基準は設けないで、評価項目(職務分類)、評価要素、着眼点までは共通の基準を設定する。校種の差異に対応するため、校種ごとの着眼点の具体的事例を列記する。
5 評価方法等
(1)校長独自の評価項目設定の是非について
○ 各学校の特性や今後の学校の個性化・特色化を考え、校長がそれぞれの学校にふさわしい評価項目を設けることの是非について検討した。
校長が学校の特性や特色を踏まえて独自に評価項目を設定しても、教育活動については他の職務分類で評価されることから、総合評価の際に二重評価されることになり、過大評価(又は過小評価)となる恐れがある。
このため、校長が独自に設定する評価項目は特段設けないこととする。
(2)特記事項欄の設定について
○ 各学校それぞれに抱える課題や個々の教員が抱えている特別な課題に対して顕著な実績を挙げた場合、加点評価を行った場合等にその内容を記述し、主として教員の指導育成に活用するため、特記事項欄を設定する。
(3)教員の経験や年齢を評価に反映させることについて
○ 現行では一般教員は全て同一の職層であり、児童生徒を指導するという基本的な職務に差異はないことから、年齢や経験にかかわりなく基本的には同一の評価基準で評価すべきである。
○ 学校運営や特別活動などの場面において、教員は経験年数に応じた役割を果たすことが期待されており、その役割の遂行状況が評価に反映される。
(4)困難な役割を担当した場合の評価について
○ 教員には、校務分掌をはじめとしたさまざまな役割があり、役割分担についても軽重がある。困難で引き受け手のいない職務を担当した教員が、本人の努力にもかかわらず十分な成果が挙げられなかったとしても、能力、情意の評価が低くなるとは限らないし、プロセスを十分に考慮することにより、実績についても高い評価となる可能性がある。
また、困難な役割を担当した場合には、自己申告で設定する目標自体も標準的な目標よりも高い水準になると考えられ、そのような場合、目標を100%達成できなくてもなお、その成果は標準的なものよりも高いことも多い。
以上のことから、困難な役割を担当したこと自体に対して加点評価を行わなくても、適正に評価される。
(5)総合評価における各評価項目・要素間のウェイト付けについて
○ 学習指導、生活指導・進路指導等の各評価項目、能力・情意・実績の各評価要素別に評価を行い、それらをもとにして総合評価を行う場合、各項目間、要素間のウェイト付けの方法として、固定的に定める方法と、評価者の判断により定める方法とが考えられる。
教員の基本的な職務としての各評価項目や各評価要素の重要度には、一般的には学習指導、生活指導・進路指導といった一定の順位があると考えられるが、学校ごとに抱えている課題や重点を置く経営方針は異なると考えられる。そのため、各項目・要素に固定的なウェイトを定めると、却って課題解決や学校経営方針の実現などに努力している教員を適正に評価できない可能性があり、固定化することは適当ではない。
したがって、各評価項目・要素の重要度の順位を踏まえた上で、校長及び教頭が、学校の課題や経営方針等を考慮して評価を行うこととする。
6 絶対評価と相対評価
(1)絶対評価と相対評価の活用
○ 評価は絶対評価と相対評価により行う。
絶対評価は、職務遂行を通じて挙げた実績やその過程における努力等を積極的に評価するとともに、いまだ不十分な点やさらに伸ばすべき点についての適切な指導育成の方策を見出すために活用する。
相対評価は、業績評価の結果を、給与や昇任等に適切に反映させるために活用する。
(2)絶対評価・相対評価の評価主体
○ 絶対評価は、教員の指導育成に活用することを主要な目的として行われることから、直接教員の指導育成に携わる教頭及び校長が、それぞれ第一次評価者及び第二次評価者として行うこととする。
○ 相対評価は教員の処遇面への活用を主要な目的とすることから、教育委員会教育長がその責任において行うこととする。ただし、教育長が相対評価を行うに当たって参考とするため、校長は第二次評価(絶対評価)結果に教育長が示す配分率(3段階、全校共通)を適用した資料を作成し、教育長に提出することとする。
○ 相対評価は、都立学校にあっては高等専門学校、高等学校、盲・ろう・養護学校を単位として、区市町村立学校にあっては区市町村別に小学校、中学校を単位として行う。(以下「評価単位」という。)
○ 都教育長は、相対評価の配分率(5段階、全評価単位共通)を定める。また、区市町村立学校について、評価者が配分率に合わない配分で評価した場合に必要な調整を行うとともに、評価者の行った業績評価に過誤等があると認められる場合に指導助言を行う。
各評価段階における評価者
<絶対評価>
第一次評価者 第二次評価者 都立学校 教頭 校長 区市町村立学校
<相対評価>
評 価 者 都立学校 東京都教育委員会教育長 区市町村立学校 区市町村教育委員会教育長
7 主任や児童生徒・保護者の意見の評価における位置づけ
○ 各主任は、その担当する分野に関して企画立案及び連絡調整に当たり、必要に応じて指導、助言を行うことから、担当する分野を分掌する他の教員の職務遂行状況を身近な立場で把握している。このため、校長・教頭が評価を行うに当たっては、主任から参考意見を求めることができるようにする。
○ 児童生徒や保護者の意見は、直接業績評価に連動させるのではなく、教員が行う授業等の改善に向けての参考意見として活用していく必要がある。したがって、意見を聴取する具体的な方策やその活用策について、今後、評価実施上の課題や人材育成の方策を検討する際に、併せて検討していく。
W 今後の課題
○ これまで、教諭に限定して検討を行ってきたが、実習助手や寄宿舎指導員など他の職種の教育職員も人事考課制度の対象となる。このため、本年12月の人事考課の制度面に関する最終報告に向け、教諭についての検討結果を踏まえて、引き続きこれらの職種の自己申告・評価基準等の検討を進めていく。
○ 評価者訓練をはじめ、評価結果の本人開示のあり方、苦情申立てなどの仕組みといった評価実施上の課題や、評価結果の具体的な活用策及び人材育成の具体策については、来年3月の報告に向けて検討を行うこととする。
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